創立25周年特別企画
コラム


Episode4

主治医ドットコムの葛藤

1998年にスタートした診療予約システム「主治医ドットコム」は、前回ご紹介した五の橋キッズクリニックが掲載されたランキング本のおかげで、小児科ランキング30位以内のクリニックから続々と問い合わせが入るようになりました。「情熱大陸」の放映の中で当社の予約システムが紹介されたこともあり、五の橋の患者数が捌けるならうちのクリニックでも使えるかも、とお考えいただいたわけです。そのため、最初のうちはとにかく混んでいるクリニックが顧客として増えていきました。2000年を過ぎたあたりから、似たようなウェブ予約システムの出現、あるいはそれまで電話自動応答システムでの予約システムを販売していた会社がようやくウェブ予約の機能を追加、という流れが始まります。

一方、当社には、実際に他社のシステムを使ってみたが患者数の想定が全く違う、混雑状況が他のクリニックとうちでは違う、という先生からのご相談やご紹介が増えてきました。患者数で予約システムのどこに違いが出るのか? はじめは私達もわかりませんでしたが、実際に他社システムを操作させていただいたところ、すぐに答えが分かりました。 主治医ドットコムと他社システムとでは、レスポンス(操作画面の反応)が全く違いました。大勢の患者が一気にアクセスすると、他社のシステムでは処理を捌き切れず、「サーバーが混雑して繋がらない」という状態に陥ります。いわゆるサーバーダウン状態です。わかりやすい例で説明すると先日、2020年東京オリンピックのチケット優先申し込みがありましたね。サイトにアクセスした方は驚かれたと思いますが、期限が近づくとアクセスした瞬間に「ただいま2万5千345人が待っています。」というような表示になり、繋がるまでの予想時刻が4時間46分などと表示されるのです。これは、一人一人がゆっくりチケットを確認できるように作られているため、一度にアクセスできる人数が限られてしまうためです。サーバーのパンクを防ぐためには仕方ないことですが、一人がサーバーに繫ぐと、その人がログアウトするまで長~い待ち行列ができてしまうのです。予約システムも同様で、簡易的にプログラミングをしてしまうと同様の現象が起きてしまいます。主治医ドットコムは当初から、患者からの予約操作中の接続を毎回、最小限の時間で切断し、次の操作が発生すると接続するような仕組みになっています。そのため、五の橋キッズクリニックでも、9時にスタートし、9:00:07 で予約終了、これが運用上良いかどうかは別として、サーバーは十分に余裕を持って処理できていたわけです。つまり、最初からウェブ専用でスタートした主治医ドットコムでは、(もちろん電話自動応答の機能はつきませんが)ウェブ専門のスペシャリストが設計、プログラミングしていました。他社にはない豊富な知識があったのです。ユーザーにはわかりづらい違いですが、混雑しているクリニックには特に適合したのです。ここまで書くと順調な出だしであったように聞こえますが、思わぬ障壁にぶつかります。それは前述の逆のパターン。五の橋キッズをはじめ、ランキングが高いクリニックの導入事例が邪魔をします。「うちはあそこまで混んでないから必要ない、手作業で足りている」「もっと簡単で安いシステムでいい。」といった意見です。問い合わせは増えたものの、成約につながる割合が思ったほど高くなく、使っていただければ便利さや受付のストレス解消を実感できますが、なかなか使っていただくところまでいきません。デモのご用意をしても、そのすぐ先に契約があるようなイメージでなかなかご利用件数が伸びませんでした。営業面での葛藤が続きました。

この頃、営業先で先生からよく言われる断り文句がありました。
「診察予約とか予防接種予約は要らないかな、インフルだけなら使いたいんだけど。。。」
それは難しい! サーバーは1年中動かしていてコストもかかり、年末3ヵ月だけの利用では到底、採算が取れず。。。

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